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広島高等裁判所岡山支部 昭和28年(く)2号 決定 1953年11月17日

本籍 岡山県○○郡○○町大字○○○○○○番地

住所 同所

農業手傳

抗告 新村昌一(仮名)昭和九年一月十八日生

主文

原決定を取り消す。

本件を岡山家庭裁判所に差戻す。

理由

本件抗告の要旨は、申立人新村昌一は昭和廿七年(少)第二八九九号窃盗保護事件につき昭和廿八年一月十四日岡山家庭裁判所において同人を岡山保護観察所の保護観察に付する旨の決定を受けたが、該処分は虚無の事実に基く不法のものであるから之が取り消しを求めるというにある。

よつて記録を精査するに、申立人新村昌一は窃盗保護事件につき、昭和廿八年一月十四日岡山家庭裁判所において、岡山保護観察所の保護観察に付する旨の決定を言渡され、これに対し同月廿八日抗告の申立を為したことが明かである。而して事実取調請求書に添付の各調書の写(疎第一号証乃至第七号証)及び当裁判所において取調べた証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同L等に対する各証人審問調書、並に申立人新村昌一に対する調書に徴すれば、右新村が原決定添付の一覧表記載の犯行を他と共謀の上又は単独で為したことを窺うに足りない。従つて同人が該犯行を為したものと認めて決定をしたことは重大な事実の誤認を疑うに足るものというべく、この誤認が決定に影響を及ぼすことは言をまたないから原決定はこの点において取り消しを免れない。

よつて本件抗告は理由ありと認め少年法第三十三条第二項により原決定を取り消し、本件を岡山家庭裁判所に差し戻すこととし主文の通り決定する。裁判長判事宮本誉志男、判事浅野猛人、判事幸田輝治

別紙一

昭和二十七年少第二八九九号

決定

少年 新村昌一 昭和九年一月十八日生 職業農業手傳

本籍 岡山県○○郡○○町大字○○○○○○番地 住居 本籍地に同じ

主文

少年を岡山保護観察所の保護観察に付する。

理由

犯罪事実

少年は別紙犯罪事実一覧表の通り犯罪をなしたものである。

適用法条

少年の本件各所為は孰れも刑法第二三五条、第六〇条に該用するものである。

要保護性

家庭内は争事多く少年は家庭に対し可成リ欲求不満を持つて居り性格的にも軽卒、雷同的傾向があり保護能力の稀薄、交友関係の不良等相寄り、相俟つて再犯の虞多分に窺はれるが今後適当な観察者をして適切な補導を図れば尚更生の余地あるものと認め少年法第二四条第一項第一号少年審判規則第三七条第一項を適用して主文の通り決定する。

昭和二十八年一月十四日

岡山家庭裁判所

裁判官

(少年新村昌一犯罪事実一覧表)

少年は、M、Aと共謀の上

一、昭和二十五年七月二十五日頃○○郡○○町○町八田神社境内に於て○○郡○○町八二七の三番地△△営業所総社出張所長国府藤一管理に係る直経二・六粍中古被覆電燈線九〇米位時価一三五〇円相当を窃取し

二、同年十月二十二日頃○○郡○○村大字○田川堤上に於て同所木村兼吉管理に係る直経二・六粍中古被覆電線三〇〇米時価五四〇〇円相当を窃取し

三、昭和二十六年五月十二日頃○○郡○○町○○○に於て同町大字大曲二六四番地佐々木米夫所有に係る水揚用四種線中古電線(キヤツプタイヤ)一二〇米位時価四〇〇〇円相当を窃取し

四、同年四月七日頃○○郡○村大字○○○○○田川堤上モータ小屋に於て同村大字○○二〇七七番地武本芳男所有に係る直経二粍中古被覆電線四〇米位時価一〇〇〇円相当を窃取し

五、同年四月初頃○○郡○○村大字○○○○沖中に於て同村大字○○○村村長水川治郎八管理に係る中古被覆電線三〇〇米位時価七五〇〇円相当を窃取し

六、同年五月頃○○郡○○村大字○○○○沖中に於て同村村長水川治郎八管理に係る中古被覆電線二〇〇米位時価五〇〇〇円相当を窃取し

七、同年六月終頃○○郡○○村大字○○○地内に於て同村村長水川治郎八管理に係る中古被覆電線八〇〇米位時価二〇〇〇〇円相当を窃取し

八、同年十月二十九日頃○○郡○○村大字○○○○○地内に於て中配川辺散宿所楢村正己管理に係る直経二・六粍被覆中古電線八五〇米位時価一七〇〇〇円相当を窃取し

九、同年十二月十九日頃○○郡○○村地内に於て同村村長水川治郎八管理に係る中古被覆電線二〇〇米位時価二〇〇〇円相当を窃取し

一〇、昭和二十七年二月二十二日頃○○郡○○村大字○○○○○○○附近に於て中配箭田散宿所池上誠管理に係る直経二・六粍被覆電線一四〇米位時価四二〇〇円相当を窃取し

一一、同年三月初頃○○郡○村大字○○○○○に於て同村農業協同組合組合長三海幸一管理に係る直経二・六粍中古被覆電線一五〇米位時価三〇〇〇円相当を窃取し

一二、同年四月三十日頃○○郡○○村大字○○○○○に於て同所守屋精太郎管理に係る中古直経二粍被覆電線七貫位時価五〇〇〇円相当を窃取し

一三、同年同月同日頃○○郡○○町大字○○○に於て同所山口乾太郎管理に係る中古直経二粍及三・二粍被覆電線五貫位時価三〇〇〇円相当を窃取し

一四、同年五月四日頃○○郡○○町大字○○に於て同所農業協同組合組合長三海幸一管理に係る中古直経二粍被覆電線三〇〇米位時価三〇〇〇円相当を窃取し

一五、同年同月同日頃○○郡○○町大字○○に於て三海幸一管理に係る中古直経二粍被覆電線四〇〇米位時価四〇〇〇円相当を窃取し

一六、同年同月五日頃○○郡○○町大字○○○○○地内に於て三海幸一管理に係る中古直経二粍及二・六粍被覆電線三六〇米位時価四〇〇〇円相当を窃取し

一七、同年同月二十三日頃○○郡○○町大字○○○○○部落○田川堤南に於て中配総社出張所長市森荒太管理に係る中古直経三・二粍被覆電線一五〇米位時価七〇〇〇円相当を窃取し

一八、同年同月末頃○○郡○○町大字○○○○○部落○田川堤南に於て市森荒太管理に係る中古直経二・六粍被覆電線二四米位時価八七〇円相当を窃取し

一九、同年同月二十九日頃○○郡○○○村大字○○二〇九〇番地○○○○方横に於て市森荒太管理に係る中古直経五粍及び四粍被覆電線三〇米位時価二九一〇円相当を窃取し

二〇、同年同月同日頃○○郡○○○村大字○○字○○田中リキエ方横に於て市森荒太管理に係る中古直経二・六粍被覆電線一二〇米位時価三七七〇円相当を窃取し

二一、同年九月八日頃○○郡○○町大字○○地内に於て市森荒太管理に係る中古直経二・六耗被覆電線四二〇米三・二耗鉄線一五〇米時価一〇九五〇円相当を窃取し

二二、同年同月同日頃○○郡○○町○○○地内に於て市森荒太管理に係る中古直経三・二耗被覆電線三〇米五耗鉄線五〇米位時価二五〇〇円相当を窃取し

二三、同年十二月五日午后十時三十分頃○○郡○○町大字○町八田神社境内及参道に於て市森荒太管理に係る中古直経二・六耗被覆電線三八〇米位時価一〇〇〇〇円相当を窃取したものである。

別紙二

昭和二十八年少第二七九六号

不処分決定

少年 新村昌一 昭和九年一月十八日 農業

本籍 岡山県○○郡○○町大字○○○○○○番地

住居 同所

上記少年に対する窃盗保護事件に付て当裁判所は審判の上次の通り決定する。

主文

この事件について少年を保護処分に付さない。

理由

本件非行事実(司法警察員作成に係る本件送致書電線盗犯一覧表記載を引用する)はこれが証明がないから少年法第二三条第二項により主文の通り決定する。

昭和二十九年一月七日

岡山家庭裁判所

裁判官

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